売場利益最大化の経済性原則
粗利生産性による優位付け
GMROIによるカットオフ
「ABC分析」では、商品の売上高や粗利益の大きな順に並べて、商品の優劣を判断しています。これは、「売上高や粗利益の大きな商品は、よい商品である。」と言っていることになるわけですが、売上高や粗利益が小さくても、よい商品はあります。
「ABC分析」で見落としているのは、経営資源の制約を全く無視している点です。店舗の陳列スペースは限られているので、商品を無制限に陳列できるわけではありません。「限られたスペースでどれだけ多くの利益を獲得できるか」を問うべきです。
陳列スペースは、商品の在庫量によって変化します。死に筋品の在庫は、株主資本をムダに投資していることになりますし、貴重な店舗スペースを浪費していることにもなります。そうであれば、「もっと有効利用はできないか」という疑問が湧いてきます。つまり、商品のスペース効率や資本効率について注意を払うことが、売場の利益を最大化する方法なのです。
例えば、「赤字商品」をやめれば増益になるかという問題があります。伝統的なコスト計算では、売場スタッフの人件費や店舗賃料、電気代などの経費を商品に配賦して“本当の利益”を求めるべきだという議論があります。でも、こうして計算した商品の利益が仮に赤字であったとしても、その商品を直ちに不利な商品と決めつけることはできるのでしょうか。できる場合もあれば、できない場合もあるのです。できない場合の最も重要な注意点は、商品の制約条件がそれぞれ異なっている場合です。小売業では、商品の制約条件(商品サイズ、フェイス数、原価、粗利、需要など)は、それぞれ大きく異なっていることが普通ですから、上記の議論は、できないと答えることが正解です。「売上粗利率の大きな商品は小さな商品よりも有利である」とか、「交差比率の大きな商品ほど有利な商品である」といった議論もありますが、これらも同様に、商品の優劣を決めることができる場合もあれば、できない場合もあるのです。
小売業は、店舗スペースという大きな制約のなかで経営をしています。このような環境の中で利益を最大化しようとするならば、制約条件をきちんと考慮しなくてはなりません。
売場の利益を最大化するための経済性原則は、以下のように、いたってシンプルです。 学問的には、経済性分析や制約理論の分野で研究されています。 貴重な店舗スペースを有効に利用すること、株主から預かっている資本をムダに投資しないことの2点の原則に基づいて評価する必要があります。
売場利益を最大化する経済性原則はシンプルです。
原則①:粗利生産性による優先順位付け
粗利生産性の大きな商品から順に売場のスペースを使い切るまで商品を陳列する。
粗利生産性=期間販売粗利÷商品の陳列スペース
原則②:GMROIによるカットオフ
GMROIの大きな商品から順に商品を採用し、GMROIが資本コストを下回る商品は採用しない。
GMROI=期間販売粗利÷商品の平均在庫(原価)
例えば、粗利益10円、原価100円の商品が年間1個売れるとして、それを1個陳列しているならばGMROI=10÷100=10%となります。しかし、これを2個陳列している場合は、GMROI=10÷200=5%となります。
もし株主の期待利益率が10%であれば、陳列数を1個にしてGMROI=10%を確保するか、2個くらいは陳列しないと消費者が手を伸ばしてくれないと判断されるのであれば、この商品は採用しない方がよいと言うことになります。
要するに、株主の期待利回りよりもGMROIが下回ってい商品については、その在庫に投資するくらいならば、その資金で自社株買いをして、株主に返還した方が株主は喜ぶということです。
もし、自社の収益性の低下に問題意識を持っているならばのGMROIの分析をしてみてはいかがでしょうか。
上記2つの指標を正確に計算するには、商品の陳列量を最適化する必要があります。その基準在庫を「相対最適所要量」といいます。相対最適所要量による発注在庫管理を行うことで、スペース効率とGMROIの改善を高い次元で解決することが出来ます。
•商品の粗利生産性とGMROIは計算できていますか?
•商品の陳列量は最適化できていますか?
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